2017年09月05日

「蜜蜂と遠雷」 遠雷の意味は? 

西の図書館から電話があった。
半年ほど前に予約した直木賞受賞の「蜜蜂と遠雷」が貸し出せるという。

急いで借りに言った。
蜜蜂と遠雷.jpg

恩田陸は、昔、「夜のピクニック」を読んだ覚えがある。

「蜜蜂と遠雷」は、直木賞ということだけで中身は知らなかった。

表紙をめくると紹介文が載っていた。
本の紹介.jpg

ピアノコンクールの話だ。

読み始めたら、ぐっと引きつけられた。
おもしろい!

コンクールに挑戦するキャラクターが個性的で魅力がある。
特に、風間 塵(じん)。 

ピアノの音を文章でどう表現するか、中々興味深い。
マンガでは、絵と文字で音楽を表現できる。のだめカンタービレやブルージャイアント、ましろの音など。

小説は言葉だけで音楽を表現する。

例えば、風間 塵の演奏。

 それまでどんより弛緩していた空気が、その音を境として劇的に覚醒したのだ。
  違う。音が。全く違う。
  三重子は、彼が弾き始めたモーツァルトが、今日これまでにさんざん聞かされたのと同じ曲だということに気付かなかった。同じピアノを使っているのに。同じ譜面を使っているのに。(略)

  ステージが明るかった。
  少年がピアノと触れあっている(としか思えなかった)ところだけがほっこりと明るく、しかも何か極彩色のキラキラしたものがそこからうねって流れ出してくるように見えるのだ。(略)

 コンクールは一次予選から三次予選まであり、最後に6人だけが本選で演奏できる。ということは決勝進出者は4回演奏するということで、その中にモーツアルトやベートーベン、バッハ、ショパン、その他色々な作曲家の名曲が出てくる。その曲が色々な言葉で表現されていて、実際に演奏を聴きたくなってくるのだ。

 ところで、本の題名。「蜜蜂と遠雷」の蜜蜂は、風間 塵が養蜂をしている家の子だから。

では、遠雷の意味は何だろう?

色々考えて、次の結論に至った。

それは、風間 塵をコンクールに推薦した、塵のピアノの先生、ホフマンの推薦状が基になっているのではないか?

ホフマンの推薦状
挑戦状?.jpg


「皆さんにカザマ ジンをお贈りする。文字通り彼は『ギフト』である。」

この推薦状は、遠くで響く雷のように審査員の心に響き、初めは理解しなかった審査員を、いつの間にか、カザマ ジンの演奏に引き込こんでいくということではないか。

PS 「蜜蜂と遠雷」が、今年の本屋大賞に選ばれた!




posted by にしやん at 22:44| 京都 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月18日

海の見える理髪店

久しぶりに小説を読んだ。

第15回直木賞受賞の「海の見える理髪店」
表紙.jpg

直木賞や本屋大賞などを取った小説を、図書館で予約して読むことにしている。

何ヶ月も前から4冊予約していて、この間、忘れた頃に図書館から、順番が来たという電話が入った。

表紙を開くと、本の紹介が貼ってあった。
批評.jpg

そして目次。
目次.jpg

短編集なんだ。

 最初の「海の見える理髪店」
 たった1席の、店の椅子。目の前の鏡には海の景色が映るように工夫されている。
店主は客の髪を理髪しながら、自分の生い立ちをしゃべっていく。
 一時は銀座に店を出し、映画スターも訪れる大きな理髪店を経営していたこともある。
なぜ今海の近くに小さな理髪店を開いているのか?

 主人の語りで少しずつわかってくるのだけれど、人の語りで話が進んでいく書き方が新鮮でおもしろい。
一気に読んでしまい、読後感も良かった。さすが直木賞。

 あと印象に残ったのが、最後の「成人式」
 たった一人の娘を交通事故で亡くした夫婦の話。北上さんの評ににあるように、胸にしみた。

 図書館に予約してある本はあと3冊。20人待ちぐらい。あと何ヶ月かかるんだろう?
posted by にしやん at 07:06| 京都 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする